東京桑野会会員からの特別メッセージ 17号 | |||||
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78期 宗像良保 |
2016.07.22 原発事故から5年、フクシマの今 東京桑野会特別講演会(2016年6月3日)より 宗像良保(78期) 元・プレジデント社 東京電力福島第一原子力発電所の爆発事故直後の政府の措置について、当初は原発から半径170km圏(およそ仙台−宇都宮間)を『強制避難地域』、半径250km圏(およそ盛岡−横浜間)を『自主避難地域』と決定したが、この時国民向けに発表されることはなかった。 しかしながら、さすがに在日外国大使館には連絡したようだ。中国大使館は東北・関東在住の中国人に対し、直ちに新潟空港に集合するよう通達した上で福島駅や郡山駅をはじめ東北・関東の主なターミナル駅にチャーターバスを手配し、新潟空港までのピストン輸送を実施した。日本人を配偶者とする中国人も対応し、私の友人の中国人妻は中国に里帰りし、未だに戻ってこない。フランス大使館は福岡空港にジャンボジェット機を2機準備して、日本国内のすべてのフランス人に「何が何でも福岡空港に来い」と指示し、フランスへのピストン輸送を実施した。他の在日外国大使館もしかり、米国大使館以外の首都圏の大使館や領事館はすべて大阪など放射線が届かない圏外の地域に引っ越した。 私はチェルノブイリを2度にわたり視察し、現地の様子を取材してきた。現地で「フクシマから来た」と言うと、会う人ごとに「危険だからここに引っ越して来い」と言われてしまった。それはチェルノブイリ法を適用すると、放射線量が福島市周辺では強制避難地域、郡山市や私が現在住む須賀川市周辺で自主避難地域に該当しており、彼らいわく危険だと言う。私たちの故郷はこのような地域に現在もなっており、実家にいる家族や親戚、子供・孫も暮らしているのである。 われわれが日常食べている食品についても同様である。米国・ロシア・イギリス・フランス・中国・韓国・台湾など14か国は、未だに日本からの食料品輸入を禁止あるいは大幅に制限している。その他の国でも、輸入したとしても放射線検査は非常に厳しい。避難指示が日本国民に知らされていなかったように、海外の人々には食品の危険性を認識・啓蒙されていたが、知らされていないのは日本国民だけなのだろうか。食品の全数検査で「放射線量異常なし」の合格基準が根拠もなく甘い数値で決められているのではないか。除染土壌の詰まった黒い袋が、大量に小学校の校庭や仮設住宅の隣に野積みされていて本当に安全なのだろうか。政府は混乱を避けたいと言い訳するだろうが、この「つけ」は今後確実に顕在化してくると考えられる。 福島県下では事故から5年経過した今、当時18歳以下だった子供から131人の小児甲状腺ガンが見つかった。郡山市内の小学校でも17人が見つかり、転校や入学拒否が起きている始末である。県民健康調査検討委員会の報告では、事故前に比較してこの小児甲状腺ガン発生数が数十倍のオーダーで多いと発表した。チェルノブイリで分かっていることとして、低線量とは言え放射線汚染地区に住む子供の心臓や肝臓、その他の臓器・器官が老化してしまうと言う。加えて放射線の影響は、通常の遺伝的損傷には見られない「初代より2代目」、「2代目より3代目」と言うように代を追ってますます大きな影響が現れるという特徴がある。大人であっても安心はできず、汚染地域に戻って住んでいる人たちに、染色体異常や多重異常細胞の出現率が高まってきていると言う。 子供や孫は何としてでも救いたい。救わなければならない。福島に住む覚悟なら、子供たちの長期にわたる保養措置や、安心して与えられる安全な食べ物の確保など、政府に頼ることなく考えられる限りの対策を講じたい。 【編集部注】 宗像良保氏は、2012年12月にプレジデント社を退職し、首都圏から生まれ育った須賀川市に移住した。本稿は、2016(平成28)年度の東京桑野会総会における特別講演の内容をまとめたものであり、氏の持論を展開したものである。議論の前提となる科学的なデータについて具体的に示されておらず、条件や出典については講演者に直接問い合わせをお願いしたい。 東京桑野会ホームページ委員会編集 |
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参考資料: 福島県の空間放射線量推移 | ||||