東京桑野会会員からの医療メッセージ 2号 | |||||
|
|||||
91期 坪井永保 |
2017.05.14 健康寿命の延伸のために我々ができること 坪井永保(91期) 一般財団法人慈山会医学研究所付属坪井病院理事長 厚生労働省は2000年3月に21世紀に向けて国民一人一人が健康を実現するためのガイドラインとして「健康日本21」を策定しました。これは、国民の健康寿命の延伸(健康で長生きすること)のために、様々な生活習慣病の危険因子、罹患率・死亡率を10年間でどこまで改善できるかという目標を設定して、様々な健康政策を展開するというものです。2000年からの10年間を第一次とし、2011年4月から再び10年計画で「第二次健康日本21」が開始されました。重点項目は栄養・食生活、身体活動と運動、休養・こころの健康づくり、たばこ、アルコール、歯の健康、糖尿病、循環器病、がんの9項目です。 皆さんは病気の一次予防、二次予防という言葉をご存じですか? 一次予防とは病気の発症そのものを予防することを指します。たとえば、バランス良く食事を食べ、運動不足にならないように努力し、なるべくストレスを避ける努力をして健康的な毎日を心がけて生活習慣病などを予防することが一次予防です。それに対して二次予防は、病気の早期発見・早期治療です。病気を早い段階で見つけて治療を行うことです。このために重要なことは健康診断や人間ドックを利用することです。 今まで、一次予防も二次予防もともに大切だとされてきました。 しかし、近年の生活習慣病の増加によって、より一次予防の必要性が強調されるようになりました。健康日本21プロジェクトはこのことから始まりました。 メタボリック症候群という言葉が数年前にブームになりました。肥満に加えて高血圧、高脂血症、糖尿病などが合併している状態で、心筋梗塞や脳卒中を高率に発症し死に至る怖い病気です。肥満は寝ている間に呼吸が止まる「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」という病気の原因にもなります。 皆さん、寝ているときに大きないびきをかき、人から「息してなかったよ!」と言われた事や、そばにそのような人はいませんか? 我が国は、中高年の男女を中心として約22パーセントつまり5人に1人がSASだといわれています。 10秒以上呼吸が止まることを無呼吸と呼びますが、SASは「無呼吸が一晩(7時間以上の睡眠中)に30回以上ある場合」と定義されています。「閉塞」といって、のどの奥が閉じてしまう事によっておこる「閉塞型睡眠時無呼吸症候群」がほとんどです。 SASは放っておくと高血圧、高脂血症、糖尿病、不整脈などを合併し、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞や脳卒中といった命にかかわる病気を引き起こします。 SASの一番の原因は肥満です。首や喉の周りに脂肪がつき、首が太くなり、普段から喉の奥が狭くなっているのに加えて、仰向けに横になると益々詰まりやすくなります。肥満以外には、日本人の場合、人種的に顔の彫りが浅いので、のっぺりした顔の人には太っていなくても無呼吸の人がいます。また顎の小さい人も注意が必要です。このような特徴があり、いびきがうるさくて、同じ家でも別々の部屋で寝ている。昼間、耐え難い眠気が襲ってくる。朝、起きたときにすっきりしない。などの症状のある方はぜひ睡眠時無呼吸症候群の診療をしている医療機関を受診して下さい。 次にたばこです。たばこの煙には4,000種類以上の化学物質、約200種類の有害物質、約60種類の発がん物質が含まれます。多くの有害成分は比較的高温(最高約900℃)の吸煙時よりも比較的低温(最高約600℃)の自然燃焼時に発生しやすいのです。副流煙は主流煙よりも多量の有害物質を含むのはこのためです。そしてたばこは、肺がんをはじめ全身各所のがんの原因になるばかりでなく、「肺の生活習慣病」と呼ばれているCOPDという病気の原因にもなります。COPDはたばこの煙の有害物質によって肺が壊れる、溶ける病気です。ゆっくりと進行し、症状が出る頃には肺の壊れが進行していることが多いのです。一度壊れた肺は残念ながら修復しません。非常に怖い病気です。 たばこを「やめたい気持ちはあるけど、なかなか決心がつかない。」「自分一人でやめる自信がない。」など悩んでいる人には禁煙外来があります。敷地内禁煙が実行されているなどの施設基準を満たした医療機関で、患者基準を満たした方が禁煙外来を受ける場合、保険適応となります。禁煙補助薬としてチャンピックスという飲み薬を使用し、2週間毎に外来受診してもらい問診、診察、処方を繰り返します。期間は8〜12週間です。禁煙外来に必要な費用は2万円以下で、たばこを毎日1箱吸い続けた場合のたばこ代より少ない金額です。 以上、今回は健康に長生きする秘訣としていくつかの病気を例に挙げてお書きしました。また、機会がありましたら他の病気についてもご紹介いたします。 |
||||
前頁に 戻 る |
|||||
前頁に 戻 る |
|||||