東京桑野会会員からの特別メッセージ 19号 | |||||
|
|||||
91期 田中 誠 |
2017.06.05 甲子園に見た安積魂 石川高等学校校長 田中 誠 (91期) 安積高校21世紀枠2001年春季甲子園高校野球選手権大会出場時の監督 甲子園出場に際し多大のご支援ありがとうございました。東京桑野会OBの皆様を始め、多くの関係者と喜びを共有できて幸せです。甲子園球場で安積高校の名前が呼ばれることや校歌が歌われることをいつもイメージしていましたが、現実となり大きな感動を覚えました。 紫に染まったあのアルプススタンドは本当に凄かった。「苦しくなったらアルプスを見よ」と選手に言い聞かせ、実際にアルプスに勇気づけられ、全力を出し切れた。アルプスの音、銀傘にこだまし背中を押してくる。甲子園は魔物と言うけれど、「至福の時」だった。 安積高校時代は投手兼4番打者、野球がうまいつもりで入学したが、先輩のプレーに衝撃を受けた。1年生の夏の大会を経て本気モードに入り、高校野球の魅力に憑りつかれた。自宅の日和田から安積高校まで10.5kmを入学直後は汽車とバスで通学したが、夏以降は自転車通学。さらに2年生の夏からは往復ランニングで通学した。練習試合で大敗し監督に泣きついたが、勇気をもらったことがきっかけで3年生の夏の大会で全力を出し切ることができた。こうして「自分も高校野球の指導者になりたい。恩返しをしたい。」と思い、今でも指導者としての原点になっている。 高校の社会科の教員となり、運よく安積高校に2回、通算15年間勤務することができた。野球部OBとして生徒を指導する機会を得て、かつてない方法で生徒を育てた。強くて刺激的な相手との練習試合、各種技術講習会への参加、大学野球への練習参加、SAQやウェイトトレーニング、メンタルトレーニング、管理栄養士による野球食の導入、プロ野球キャンプ見学などである。2001年、初めての21世紀枠で甲子園出場に選ばれ、当時この制度は私たちのために作られた制度だと思った。積年の努力と文武両道の模範校、前年の県大会での記録(春季県大会で22年ぶり優勝)が評価された。高野連関係者からも高い評価と激励を受けた。 甲子園で戦うための準備は、まずメンタル。なぜ選ばれたのか、堂々とおごることなくそして淡々と。誹謗中傷、写真週刊誌の否定的観点からの取材や過度のプレッシャーから生徒を守り、地元のマスコミの協力を得て本戦を迎えることができた。選手一人ひとりが自分の役割を設定・認識し、自分たちの力を出すことに集中した。迎えた大会初日3月25日の第3試合、対するは石川県の金沢高校戦。1−5で敗戦したものの全選手が全力を尽くし、正々堂々とした戦いぶりは大会事務局から高い評価を受け「初めての21世紀枠は成功した」と言わしめた。試合直前のマスコミ取材、整列時のカメラマンへの対応、球場内での全力疾走、素早い動きと若さ溢れるプレーの数々、7000人の大応援団に多くの勇気をいただき、「苦しくなったらアルプスを見よ」・・・至福の時、1時間41分、甲子園は私たちをあたたかく迎え入れてくれた。 甲子園からの贈り物。安積の名は全国に知れ渡り、有力校からの練習試合の申し込みが続いた。翌月の4月9日、安積は初めての女子生徒137名を迎えて男女共学校となった。まさに21世紀の幕開けである。甲子園に行きたいから安積を選ぶ、そのために勉強を頑張って入学するという生徒が増えた。その後も県大会でベスト4やベスト8の常連校となり、屋内練習場の完成や遠征用のバスの購入(OBの皆様のご寄付のおかげで)、他の運動部とも共有し学校の活性化へとさらにつながった。 今後の安積への期待。武器は勝利への意識の高さと集中力。そして安積を愛する人たちの熱い応援があって、みんなの力を結集し再び甲子園の土を踏みましょう。 このような機会を設定していただき、さらにたくさんのOBの方々にご静聴いただきましてありがとうございました。深く感謝の意を表します。 【編集部注】 この文章は、東京桑野会特別講演会(2017年5月31日)の内容をまとめたものです。 講演会の資料(pdf)はこちらになります。 |
||||
前頁に 戻 る |
|||||