東京桑野会会員からの特別メッセージ | |||||
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116期 麻山皓太 |
2024.04.12 安積高校での合唱との出会いとその後のライフワークとしての展開と開拓 麻山皓太(116期) 千葉県船橋市職員、栗友会合唱団指揮者 憧れであった安積高校に入学し、真っ先に向かったのは、入部を心に決めていた剣道部の武道場でした。しかし、紆余曲折あり合唱部に入部することに。この決断とも言えないような判断が今の生活へと繋がることになりました。 合唱に対しては地味で堅いイメージを持っていましたが安積の合唱部は違いました。先輩方はハツラツとし、男気とユーモアがありかっこよく、自主自立的な部の雰囲気にも惹かれ、初心者だったのにも関わらずのめり込んでいきました。 合唱部顧問、五十嵐良枝先生と出会えたことも大きな幸運でした。勝った負けたの優劣競争になりやすい高校における部活動ですが、先生は「コンクールの結果に大きな意味はない。音楽はもっと素晴らしいものだ」と、繰り返し自然体で教えてくださいました。自由に楽しみながら先生と音楽をした結果、最後の男子学年である私たちが3年生の時、初めて全国大会金賞を受賞しました。結果に対しての喜びや充実感は非常に大きいものでしたが、決して燃え尽きることなく、更なる活動への展開に自然とモチベーションを繋ぐことができたのは、先生の教えのおかげだと思います。音楽室にはたくさんの素晴らしいCDがありました。その中で生涯の恩師となる栗山文昭先生を知り、かなり背伸びをした受験をし、栗山先生が指揮者兼音楽監督を務める千葉大学合唱団に入団しました。 栗山先生は「知らないことは罪だ」と繰り返し語られ、毎年世界や日本の戦跡をめぐる演奏旅行を行なっていました。私が入学した年の夏にはアウシュビッツ収容所を訪れました。初めての海外、かつ、大学1年生の私にとっては色々と大変な旅行でありましたが、現地を訪れた時の衝撃、その後の演奏の感覚は生涯忘れることはないでしょう。また、大学3年生の時には、私が実行委員長となり郡山で演奏旅行をしました。五十嵐先生率いる安積高校合唱部が賛助出演をしてくれました。千葉大学の演目は、蓬莱泰三台本、池辺晋一郎作曲の「タロウの樹」。戦争の悲惨さを直接的に訴える、演劇要素の入った作品です。聴衆からは、大学生らしくない、観ていて辛い気分になる、といった意見も聞かれ、賛否ある舞台となりましたが、この共演をきっかけに、後輩たちが私と同じように千葉大学合唱団に入団したり、栗山先生が指揮する他の合唱団に所属し、今でも多くのメンバーが仲間として一緒に歌っています。そのうちの一人は縁あって義理の弟になっています。 また、大学を卒業し損なっている最中においては、ユネスコ大使でもある「世界青少年合唱団」に参加し、欧州各国や、南アフリカ共和国での演奏旅行も経験しました。文化や考え方の違う同世代と様々議論を交わしながら濃密な時間を過ごしました。 大学を何とか卒業した後は、船橋市に奉職しながら栗山先生が指揮をする合唱団の集合体「栗友会(りつゆうかい)」の社会人合唱団に所属し活動を続けています。この「栗友会」に所属する合唱団は、35歳以下の若手のグループから、平均年齢が80歳近い女声合唱団まで、まさに老若男女、職業も思想も様々な人々が全国から200人ほど集っています。 活動内容は、自主公演をはじめ、日本全国での演奏旅行、新日本フィルハーモニー交響楽団との共演、久石譲さんとの映画音楽の録音など様々です。また、合唱オペラという新しい表現方法を模索し、演出家の方と日々稽古を重ねていたりもします。アマチュア集団でありながら、このように多様に活動する集団は世界的にもユニークかもしれません。 ある演奏会では、安積高校の先輩で、日本を代表する作曲家である湯浅譲二先生の作品を演奏することとなり、安積出身のメンバーで先生を囲んでお話することができました。学徒動員時に遭遇した空襲の話は本当に生々しく、今でも重く心に残っています。 加えて近年の私個人での活動としては、2015年にTokyo Cantat主催「若い指揮者のための合唱指揮コンクール」において第1位をいただき、それまではあくまで合唱団員としてだったのが、合唱指揮者としての活動も増えてきました。本職は船橋市の環境行政ですが、公民館等でのコンサートを企画演奏したり、同世代作曲家との共演、一昨年はオペラの指揮も経験しました。また、両国国技館で開催される「すみだ5000人の第九」においては練習指揮も担当しています。 今回、原稿執筆の機会をいただき安積高校時代を改めて思い返し、今の自分の礎となっているのは、伝統を重んじながらも変化を恐れない開拓者精神であるかもしれないと感じました。私の活動はいわゆるプロ音楽家の活動とは大きく異なっておりますが、今後も合唱を一つのツールとして、自分独自の世の中との関わり方を模索し行動していきたいと考えています。 改めて今回いただいた機会に感謝し、東京桑野会140周年のお祝いを申し上げます。 ※) 本稿は、東京桑野会会報No.46号に寄稿された文書を転載したものです |
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