タイトル

TOP頁へ戻る 東京桑野会の頁へ 会からのお知らせ 会員ブログ・メッセージボタン 事務局への問合せフォーム 静岡県中部電力浜岡原発のその後

安積高校旧本館
旧本館


東京桑野会ホームページ委員会の頁へ
2024.11.23 静岡県御前崎市の中部電力浜岡原子力発電所のその後
                                                      東京桑野会ホームページ委員会制作・編集
 まずは、当会会報bS1号(2019年4月刊)の掲載記事「御前崎雑感」より抜粋。
《引用開始》------------------------------------------
 さて中部電力浜岡原子力発電所についても触れたい。ご存知の通り、2011年3月の東日本大震災の直後、当時の菅直人首相が強制的に運転停止させたことで有名になった。1号機から5号機までの5つの軽水炉型原子炉を保有する。1号機と2号機は、震災前に運転を終了し廃炉が決定した。国内で最も廃炉作業が進んでいると言われている。6号機(138万kW)建設計画もあったが今は完全に頓挫しており、3号機〜5号機の運転再開の目途も立っていない。震災後に耐震と津波対策の強化を指摘され、非常用ディーゼル発電の電源や重油タンク位置の変更、防波壁の設計変更を余儀なくされた。非常用電源設備は高台に移動し、防波壁は標高22mまで積み上げられた。万一津波が原子炉建屋まで押し寄せても、水密扉で遮断するとした。中部電力は膨大な費用をかけ耐震・防波設備の投資を行ったが、東海地震の震源上に原発があるとして再稼働反対の意見も根強い。安全対策のPRとして、地元近隣住民への見学会や説明会がたびたび開かれた。私も見学会に紛れて発電所内に入ったが、防波壁は最初の改善が18mまでだったため、そこまではコンクリート造りの頑丈な堤が造られていたが、その上の4mは薄っぺらなモルタルブロック壁の積み上げにしか見えず、津波の圧力に耐えられるのか不安が残った。水密扉も通常は開いており、非常時にうまく閉まるのかも不安で、被災時の対策拠点となる免震棟制御室も原子炉建屋に近く、これで大丈夫?非常時に孤立しない?という疑問が残った。ちなみに水密扉の性能検査を実施したコベルコ科研(神戸製鋼の子会社)の検査報告書に誤りが発見されたと、原子力規制委員会が昨年7月に発表した。改ざんはなく単純に計算ミスと言い訳しているが、親会社のやっていたこと(鋼鈑の性能虚偽報告)を考えると信用できない。地元のうわさでは、骨材試験の虚偽報告や近隣自治会への不透明な補助金バラマキ、重大トラブルの隠ぺいといった疑惑も浮上している。工場勤務中に、防災無線で「浜岡原発で火災報知器が作動」とか「浜岡原発で救急車出動要請」などと放送があるたびにドキッとした。3号機と4号機は再稼働申請中で、原子力規制委員会の動向に注目したい。
《引用終わり》------------------------------------------
 周知のことではあるが、2011年(平成23年)3月11日(金曜日)14時46分、宮城県沖を震源とするM9.0の巨大地震が発生した。東京電力福島第一原子力発電所は、51分後に到来した高さ15mの巨大津波により全電源喪失となり、運転中の3つの原子炉がメルトダウン、休止していた4号機も格納容器内の使用済み燃料が冷却水を失い水素爆発した。4機の原子炉建屋は大きく崩壊し、大量の放射性物質が大気中に噴出し拡散した。
 当時の民主党政権下、菅直人首相は日本のすべての原子力発電所を停止させた。その後、安全性を高めるべくさらに厳しい基準となった「新規制基準」にもとづいて安全性を検証した結果、2024年10月31日現在、13基が再稼働を果たしている。また、まだ再稼動はしていないものの新規制基準に適合することを認められた原発は4基、原子力規制委員会により審査中の原発が16基になる。ただし審査中の中には、日本原電敦賀2号機が、活断層上に設置されていることを否定できないとして初の不適合の判定を受け、再調査と再申請の準備をしているものを含む。
 御前崎に3年間単身赴任で滞在し、何度も浜岡原子力発電所を訪問して構内にも入った経験がある筆者が、会報bS1号投稿記載記事の「その後」について述べる。残念ながら現時点で浜岡原発3号機、4号機、5号機の再稼働はできていない。あの有名な静岡県知事が引退し、新知事が誕生したものの原発再稼働には慎重なようである。交付金で潤う御前崎市長だけが、再稼働推進派だ。私が会報bS1号で述べた「薄っぺらい」防波壁は、その後の南海トラフ大地震の津波予測値が22.7mと試算され直し、既存の22mでは足りなくなった。更に直近では再計算して、25.2mとなった。耐圧強度不足も顕在化したのであろうか、2024年11月13日、ついに中部電力は防波壁に手を入れる決定を発表した。
浜岡原発の防波壁改造図
 最初の18mの堤は残し、一旦上部の4mのブロック積みは取り壊す。海抜28mになるよう設計し、すなわち既設の堤の上に10mの新しい壁を建設することになった。薄っぺらいブロック塀ではなく、頑丈な支え壁を建てて厚みを倍にする構造であるらしい。上図に発表した時の図面を示す。防波壁だけでなく、水素爆発を防止する「水素回収装置」や全電源喪失時も稼働する「原子炉冷却用の非常注水設備」も2系列種類の異なるものを設置するという。今までの改造費用に加え、中部電力は更にいくら追加するのであろうか。これらはいずれ電力料金に跳ね返る。中部電力だけと高をくくってはいけない。東京電力を始め全国の電力会社に負担が回ってくるのである。
 福島第一と第二原発の事故の後始末と廃炉作業費用も莫大である。新基準に達しない原子炉も廃棄となるだろう。これらの負の遺産は、50年100年に亘っての子孫の代まで負担しなければならない。原子力発電コストは「安い」なんて、誰が言ったのであろうか?
中部電力発表記事2024/11/13 津波新対策工事予定説明はこちらから
日本経済新聞記事2024/11/13 中部電力浜岡原発について

日本全国の原子力発電所立地と稼働状況
日本の原発立地図
 ※ 中国電力島根2号機(出力82万キロワット)は、2024年12月7日に震災後初めて再稼働する。
前頁に
戻 る